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裁量労働制の仕事現場で何が起こってるか正直に書くよ

こんばんは、オカモトシゲルです。

 

最近世の中的に「裁量労働制」が急上昇ワードに上がってきてますよね。

はてなブログでも影響力のある方が記事を書いてます。

dennou-kurage.hatenablog.com

 

「定額働かせ放題」とか「企業にとっての最良労働」だとか色々言われていますが、既に裁量労働制の現場で働いている立場として、現場で何が起こっているかを正直に書いてみようと思います。

まず立場をハッキリさせておくと、ぼくは裁量労働制は大反対、くたばれクソ経団連って意見です。

 

 

 

既に裁量労働制で働いていると書きましたが、ぼくはSEとして働いています。

専門業務型裁量労働制

このページの(2)に該当して裁量労働で働いているわけですね。

情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務

 

1.裁量労働制の制度

まずは前段として、うちの会社で導入された裁量労働制のルール、制度を大まかに説明しようと思います。

・新入社員〜若年時社員は裁量労働制の対象外。概ねPL(プロジェクトリーダ)が任せられるくらい昇進すると裁量労働制の対象となる。

・月150時間勤務を想定し、みなし残業時間を30時間分程度と想定(みなし残業代は役職や評価で当然差が出る)

・PJ繁忙期(月の勤務時間が210時間を超えるような月が連続する場合)は裁量労働制の対象から除外される。勤務状況が落ち着いたら裁量労働制に復帰

・深夜22時以降の勤務については深夜手当が着く

裁量労働制の導入と同時に、抜け道が出ない非常に厳密な労務管理を導入

 

と、まあこんなところでしょうか。(数字は所々フェイク入れてます)

多くの人から指摘されている、「新入社員や転職したての人に仕事を自由に進められるような裁量なんかあるもんか」という点については、うちの会社の労使交渉の結果でしょうか、考慮された人事制度になっています。

PJが本気で忙しい時期については裁量労働から外れて、超勤したぶんだけ賃金に反映されるような制度にも(一応)なっています。このルールによる副作用の方が大きいのは後述します。

また、22時以降に働くと深夜手当が出ます。これは労働基準法で決まっているルール。なので厳密には「定額働かせ放題」は出来ないわけですね。

労働基準法 第37条 第4項

使用者が,午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては,その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間において労働させた場合においては,その時間の労働については,通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

さて、こういった制度が始まって5年。今の現場はどうなっているのでしょうか。

 

2.制度導入後5年経った現場の現在

まず貧乏くじを引いたのは中間管理職

まず最初に制度の歪みが出たのは課長層などの中間管理職への負担の集中です。

労働者を働かせ放題にする制度なのになぜ中間管理職へ影響が出るかというと、こういう悪循環が起きるからです。

裁量労働制の導入によって、時間当たりの生産性が高い社員と低い社員がハッキリ可視化されます。これまでは働く時間を意識して業務割り振りをしなくても良かったため、社員のスキルや生産性の管理はアバウトでも良かったのですが、裁量労働制へ移行するとともに管理職はこれらの要素を厳密に管理する必要性が生じました。

裁量労働制を導入した企業の中で、配下の社員が裁量労働の条件から外れている状況は、イコール炎上状態と判断されるからです。

こうして管理職はPJの計画時など、これまでより高い計画の見積もり精度を求められるようになりました。

当然PJが始まってみると想定しない事態や想定したリスクの顕在化などで忙しくなってしまうことは往往にしてあります。そうなってしまうと、計画性の甘さを上層部から責められ、組合からは社員の労務管理をちゃんとしろと突っつかれる・・・

裁量労働制で最も精神的にキツイ立場に立ったのは中間管理職だと言うのは断言出来ます。会社は新しく制度を導入しますが、現場はそう簡単に順応できません。

その緩衝を行って制度を成功裡に導入に導く責任を負わされるのは中間管理職です。

 

仕事ができる人に仕事が集中する

裁量労働制の導入後、最も顕著になったのがこの点です。

PJを回す能力のある人に仕事が極端に集中するようになりました。

この仕事の多くはプロジェクトチームで回します。なので、裁量労働制が正しく運用できているか否か、の判断もチームメンバーの総労働時間を基準に判断されることになります。

つまり、うちの会社のルールでは、例えば5人でチームを組む案件があれば、PJチーム5人の月の総労働時間の合計が1050時間(1人頭210時間以内)ならば適正だと見なされるわけです。

チームメンバー5人がみんな同じように成果を出せるなら、理屈上仕事を5で均等に割って、個人の裁量で仕事を終わらせることが可能になります。

ですが、実際には先に述べた通り生産性の高い人と低い人がチームには混在します。生産性の低い人が積み残した仕事は、おのずと生産性の高い人のところに回っていきます。

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つまり、チームとして成果を出さないと行けない仕事については、厳密に自分の仕事と他人の仕事を区別仕切ることが出来ないため、生産性を高めれば高めるほど、他の人の積み残しの仕事が降ってくるわけです。

 Twitterなんかでも既に指摘されていますが、出来るやつには仕事が集まってくるから仕事が終わっても早くなんて帰れない、という意見は自分の経験則からしても正しいと思います。

 

忙しい時に限って裁量労働が適用され、暇になったら外れる

忙しい期間が連続する場合は裁量労働の対象から外す、このルールもぼくの経験するかぎり、悪い作用しかしていません。

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仕事が忙しいサイクルなんて、そんなに長くは続きません。

仮にプロジェクト開始から終了まで1年の案件だとして、本当に忙しい時間が長く続くのはせいぜい2ヶ月程度です。

うちの会社の裁量労働制では2ヶ月連続で210時間(残業時間で60時間くらい)が続くと、その翌月に裁量労働から外れます。

これが悪い方向に出ると、忙しく働いていた期間は裁量労働で働かされて、暇になった途端に通常勤務になります。裁量労働でみなし残業代が30時間分くらい付いているとすると、暇な月に裁量が外れるといつもより手取りが少なくなる、ということになります。

本来なら忙しかった月について裁量労働制を除外して欲しいんだけど・・・

まあ、世の中には現代のサクラダファミリアと呼ばれるような金融系超大規模PJもあったりして、そういうPJで働いている人にとってはこの制度でもいいのかもしれませんが。

 

3.裁量労働制のメリット

ここまで裁量労働制のデメリットというか現場で起きている実感について書きましたが、裁量労働制になって良かった面もいくつかあります。

まず、朝の出勤時間については寛容になりました。これはその会社というよりその職場にもよるのですが、ぼくのいるチームでは打ち合わせが朝に入っている、というような場合を除けば朝の出勤時間はうるさく言われません。

子どもを保育園に送るなど、家族としてのタスクは以前より消化しやすくなったと思います。

 

あとは・・・5分考えたけど思いつきませんでした。

まだ職場に裁量労働制が導入されていないひとは、なるべく導入には抵抗したほうがいいです。

一旦企業や雇う側に都合よく導入された制度が後から働く人たちのために改善されるなんてことは現代の日本では悲しいことにありえないことです。

海外に行けばエンジニアは高い給料をもらえるようなので、ぼくも今英語を勉強して、何とか脱出できないか考えてるところです。

お互いなんとかサバイブしていきましょう。

 

それでは、また。