しげるlog

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SIer人材流出について現場からの報告

SIer大嫌いクラスタの木村岳史さんの書いてたこのツイートが軽くバズってるので、

SIer現職の立場として実際起こっていることを書いてみようかなあと思う。

ポジショントークとはいえちょっと偏った言い分じゃないかなと思うところもあるので。

 

 

1. 前提としてSIer内で仕事の二分化が起きてる

まず前提として、木村さんのいうSIerはこのPPMの図で言うところの「金のなる木」の仕事をSIerの仕事のすべてだと一般化して語っているが、会社、というか業界としてこの「金のなる木」の長方形がどんどん小さくなっていて、 今後も小さくなっていくことは理解している。だからこそ体力がまだあるうちに「問題児」の領域のビジネスをたくさん作って、花形に持っていこうとして手を打っている。

 

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PPM分析【今すぐ使える戦略策定のフレームワーク

https://next.rikunabi.com/journal/20161101_s5/ より引用

 

 

自分の身の回りでも、シリコンバレーの技術を持ってきてパブリッククラウドを使った短期開発を顧客との共同のPoCや自社の商品企画としてやろうとしている事例はいくつも出てきている。

そして、こういった領域のビジネスに関してはSIerのこれまでの慣例が通用しない。もっと直接的に言うと役職と年齢の高いオジサンたちが何もわかっていない領域なので、ある意味動き方の自由が効く。SIerのプロパー社員でも直接海外企業の論文や技術文書を読んでモックやテスアプリを作ったり、内容を理解した上で顧客へ提案へ行ったりしている。なので、

>「御用聞きではなく、高い技術と提案力を持った技術者を育てる」

 

という環境がSIerでは一切ない、というのは極論だというのが現場の実感だ。

こういう「問題児」プロジェクトは各々の事業部で育てていっているものの、まだ収益の柱になるような花形になっていない。

なので事業部の中でも技術的なバックグラウンドを持っている、とか英語がネイティブ並にできる、といった属性を持っていないとなかなか巡り会えないプロジェクトであることも事実だと思う。

 

 

2. 人材流出は事実。けど社外より社内流動してる側面が大きい

SIerの中で働いている社員は、今までの収益の柱としていた重厚長大でプリミティブないわゆるSIerらしい受託開発はオワコン化していて、そこで働いていても市場価値が上がりづらいことに気付いている。これはもうガッツリ気付いてる。

 

そこで急増しているのが社内の公募制度を使った異動だ。

 

自分が務めているSIerでは社内で事業部がポジションを公募しており、一定年数務めている社員なら自由に手を挙げて応募することができる公募制度を採用している。

先ほど、先進的なSIerらしくないプロジェクトに関わるには尖った属性が必要と書いたが、もう一つ手段がある。公募制度を使ってそういったビジネスを組織で取り組んでいる事業部に異動してしまうことだ。転職ほどのリスクを負うことなくやりたいことに取り組める、社員にとっては優しい制度だ。

 

この会社内での公募制度を使った異動は実は今現場でめちゃくちゃ発生していて、人材がどんどん流出していいってる組織の幹部は危機感を覚えている。

嘘かマコトか社内公募の異動制度を廃止してくれって人事に働きかけたって話まであるくらい。

 

 

3. SIerっていうよりSIerらしい仕事から人が流れ出る傾向は今後も止まらないと思う。

SIerで今まで横行してきた仕事は労働集約型で、枯れた開発手法とツールを使って非生産的にアウトプットを膨大に積み重ねる、技術的難易度は低いけれど”絶対に失敗できない"プレッシャーは大きい仕事だった。

2019年の現在、こういう仕事を積極的にやりたい人なんて限りなく少数派なので、今後もこういった仕事から人が離れてしまう傾向自体は止めようがないと感じている。

 

こうなってくるのが気の毒なのが新入社員たち。SIerらしい仕事から人が抜けていってしまった結果、そういった仕事の多くが人手不足の問題を抱えている。これは現時点でも顕著に起きている。

現場のマネージャーとしても仕事を回さなくちゃいけないため、現職場を選ぶことができない新卒の新入社員たちがそういった仕事に回されてしまう。流行りの言葉でいうと、大企業の配属ガチャでハズレを引かされる。

 

会社説明会で聞かされた楽しそうで先進的な仕事をイメージして入ってきたら、中では閉ざされたオンプレ環境でWindwos Server2003を無理やり動かしてる、なんてあまりに笑えない状況だと思う。

 

終身雇用が崩壊して、会社が働き手を守ってなんかくれない世の中なので、これまでやってきた「就職活動」という名前の「就社活動」が、本当の意味で職業を選択する就職活動にシフトしていくんだろうなあと思いを馳せながら、今日もエクセルを開くのである。